第1回防災記録 長崎県防災推進員として
災害は、前ぶれなく、ある日突然やってきます。
だからこそ、日常のなかに潜む「小さな異変」に気づくことが、まちの防災の第一歩であると私は考えています。
私は長崎県防災推進員として、大村市内を中心に「防災巡回」を行っています。
主な活動内容は、以下のとおりです。
・決められたエリアを徒歩または車両で巡回すること
・大村公園清掃や地域活動とあわせた日常的な巡回
・危険度が高い不法投棄・道路や施設の異常などを発見した際には、速やかに行政・警察へ通報・相談
・その場で対応可能なごみの回収や軽作業については即時対応
この活動は、机上の計画では見えない現場の“リアル”を体感する、極めて重要な時間です。
特別な装備や機械を使用しているわけではありません。強いて言えば、車が必要なくらいです。
ただ、地域を自らの足で歩き、目で見て、耳を澄ませ、そして時に住民の声に耳を傾ける――それだけです。
しかし、その「だけ」にこそ、大きな意味があります。
巡回中に実際に確認した事例
・通学路の植木が倒れかかっており、通行の妨げとなっていた
・側溝が詰まり、大雨時に逆流・浸水のリスクが高まっていた箇所の確認
・避難所として指定されている施設の案内板が老朽化し、視認が困難であった
・街灯の不点灯により、夜間の通行に不安を感じるエリアの存在
こうした“災害に結びつくかもしれない前兆”を未然に把握し、対応すること――それが防災巡回の役割であり、力です。
巡回を重ねるたびに強く感じるのは、防災とはインフラだけではなく、「人の暮らしそのもの」だということです。
洗濯物の様子、玄関先に咲く花、子どもたちの声。そうした生活の気配が、地域の元気さや課題を映し出しています。
ときには、巡回中に住民の方から「いつも見てくれてありがとうね」と声をかけていただくこともあります。
その一言が、次の一歩への力になります。
危険は、地図やマニュアルの中にだけあるわけではありません。
日常の道ばた、空き家の影、街角の灯りの中に、そっと潜んでいます。
だからこそ、誰かが“気にかける”ことが必要です。
私にとっての防災巡回は、「まちを見守るまなざし」であり、「命を想う時間」です。
これからも、地道に、しかし確かに、歩いてまいります。